日本国内において酒類を販売する行為には、免許制度が採用されています。その免許は、①どこから仕入れて、②誰に、③どのような方法で売るのか、更に④どのようなお酒を扱うのかによって、細かく種類が分かれています。
この、種類が分かれている免許がくせものです。様々な免許の名前がついていますが、免許の名前から漠然とイメージできる販売先が、必ずしもその免許の想定している販売先ではないので、想定している販売先と申請する免許が本当に一致しているか、注意して確認する必要があります。
たとえば、酒類の輸入業者から仕入れたワインを飲食店に販売するには、「一般酒類小売業免許」が必要です。しかし、この免許だけでは通販はできません。通販を念頭に置いているのであれば、「通信販売小売業免許」が要求されます。また、自社で酒類を輸入する、もしくは輸出する場合は、「輸入酒類卸売業免許」が必須です。
現在、日本で申請することができる酒類の販売関連の免許は、以下の11種類です。この記事を読んでおられる方は、酒類の販売免許取得に関心がおありだと思いますが、あなたが考えているビジネスモデルに応じて、この中で必要とされる免許を申請することになります。
A 一般酒類小売業免許
B 通信販売酒類小売業免許
C 特殊酒類小売業免許
D 全酒類卸売業免許
E ビール卸売業免許
F 洋酒卸売業免許
G 輸出入酒類卸売業免許
H 店頭販売酒類卸売業免許
I 協同組合員間酒類卸売業免許
J 自己商標酒類卸売業免許
K 特殊酒類卸売業免許
申請の難易度ですが、一般的には、小売業免許は比較的ハードルが低く、卸売業のほうがすこし難しいと言われています。書類をそろえて申請してから、およそ2か月ほどで免許の取得ができることがほとんどです。
ただ、書類をそろえるまでが大変です。特に、販売場が賃貸物件の場合は、登記の確認や土地や建物所有者の同意書が必要になることがほとんどで、所有者との事前の交渉も必要になってくるはずです。思わぬ部分で頓挫することもありますので、じゅうぶん余裕を持って書類の準備を始めることをおすすめします。
ところで、2021年に私が自社の事務所で取った免許は、Aの一般酒類小売業免許、Bの通信販売酒類小売業免許、Gの輸出入酒類卸売業免許の3つです。この3つの免許を持っていると何ができるか、例を挙げます。(カッコ内が必要な免許です。)
・お酒の自社輸入をして、酒販店(飲食店や消費者は除く)に販売することができる(G)
・自社で輸入したお酒を飲食店や消費者に販売できる(A,G)
・他社から仕入れたお酒を飲食店や消費者に通販できる(B)
・自社で輸入したお酒を飲食店や消費者に通販できる(B,G)
・他社から仕入れたお酒を飲食店や消費者に販売できる(A)
・国内の酒類製造者から仕入れた商品を輸出できる(G)
どの免許が必要となるかについては、「販売先から判断する」ことが鉄則です。逆に言えば、販売先が決まってない場合は、酒類販売免許の必要な範囲を決める術がありません。ゆえに、まずは自分のビジネスモデルについて、「誰に対して販売することを想定しているか」を確定させてから、書類の準備と申請を進めてください。
必要な免許の範囲については、判断に迷うケースも出てくると思います。参考になる例示がなく心配な場合は、どの免許を申請するべきか、実際の申請前に専門家に相談することをおすすめします。
複雑な酒類販売の免許システムですが、何らかの形で酒類を販売して利益を得たいと思ったら、申請せざるを得ません。
新たに免許取得を希望する場合は、以下の4つの要件を充たした上で、書類を準備して所轄の税務署に申請します。
1 酒税法 10 条1号から8号関係の要件(人的要件)
(1) 申請者が酒類等の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けた者である場合には、取消処分を受けた日から3年を経過していること
(2) 申請者が酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがある法人のその取消原因があった日以前1年内にその法人の業務を執行する役員であった者の場合には、その法人が取消処分を受けた日から3年を経過していること
(3) 申請者が申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないこと
(4) 申請者が国税又は地方税に関する法令等に違反して、罰金の刑に処せられ又は通告処分を受けた者である場合には、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過していること
(5) 申請者が、二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(20 歳未満の者に対する酒類の提供に係る部分に限る。)、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、刑法(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び 結集、脅迫又は背任の罪)又は暴力行為等処罰に関する法律の規定により、罰金刑に処せられた者である場合には、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
(6) 申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
2 酒税法 10 条9号関係の要件(場所的要件)
正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとしていないこと
3 酒税法 10 条 10 号関係の要件(経営基礎要件)
免許の申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合のほか、その経営の基礎が薄弱であると認められる場合に該当しないこと
4 酒税法 10 条 11 号関係の要件(需給調整要件)
酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合に該当しないこと
【知りたいことがある時は!】
チェックする法律 ⇒ 酒税法
問い合わせる機関 ⇒ 免許申請をする販売場を管轄している税務署
困った時に相談できる人 ⇒ 酒類の免許申請に慣れている行政書士やコンサルタント
繰り返しになりますが、申請の内容が合っているか不安を感じる時や、書類準備をスムーズに進めたい時は、自社内で悩まず、専門家に相談することをおすすめします。
弊社では酒類販売免許申請についての不明点のご相談だけでなく、仕入先探しや輸入のノウハウ、品質チェック、国内販路の開拓など、総合的にアドバイスできます。実際に自社で酒販免許を取得しているからこそ、現場の悩みがわかりますので、お気軽にご相談くださいね!