「食品の輸入と輸出、今はどちらをやったらいいですか?」
この質問、新しく海外事業部を立ち上げようという方からよく訊かれるのですが、正直なところ、正解はありません。特に食品は、どんな状況であっても輸出・輸入両方のニーズがありますので、やりたいほうをやったほうがいいですとお答えしています。
日本の食品自給率は、農林水産省の発表によると約38%。つまり、日本で消費される食品の62%は輸入品です。
2021年のデータによると、主要な品目別の自給率は以下のとおり。
(※すべてのデータを細かく分析したわけではないので、%が異なる可能性はありますが、おおよその傾向としては間違っていないはずです。)
- 米:100%
- 小麦粉:10%
- 肉類:32%
- 牛肉:39%
- 豚肉:87%
- 鶏肉:44%
- 卵:87%
- 乳製品:32%
- 野菜:62%
- 果物:31%
- 魚介類:39%
- マグロ:9%
- サバ:22%
- サケ:82%
この自給率の低さにもかかわらず、2021年の日本の食品輸出額は過去最高を記録して、1兆2,385億円とのこと。主要な輸出品目は、魚介類、肉類、酒類など。輸出先としては、中国、香港、アメリカ、台湾が上位です。
一方、日本の主要な輸入品目は、穀類、魚介類、肉類、乳製品、野菜・果物などで、輸入元としては、アメリカ、中国、オーストラリア、カナダ、タイが上位です。
更に理解を深めるため、輸出・輸入ともに重要な貿易相手国であるアメリカの品目を見てみます。年によって品目は変わりますが、これも輸入だったのかという食品は少なくないことでしょう。
<日本からアメリカへの輸出>
- 魚介類:マグロ、サーモン、イクラ、エビ、カニ、牡蠣など
- 米:日本産米や寿司用米など
- 酒類:日本酒や焼酎、ビールなどのアルコール飲料
- 野菜・果物:キャベツ、ニンジン、トマト、レタス、リンゴ、イチゴ、メロンなど
- 調味料・食材:醤油、味噌、みりん、ワサビ、乾物など
- 菓子類:和菓子や洋菓子、チョコレートなど
<アメリカから日本への輸入>
- 肉類:牛肉、豚肉、鶏肉など
- 穀類:小麦、大豆、トウモロコシ、お米など
- 果物・野菜:ブルーベリー、アボカド、レモン、キャベツ、ニンジン、ジャガイモなど
- 魚介類:鮭、エビ、イカ、タラなど
- 加工食品:調味料、食用油、缶詰、乾物、菓子など
以上のことからわかるとおり、食品の輸入と輸出はそれぞれ日本にとって重要な役割を果たしており、どちらがよいかは、事業内容や会社のスタンス、刻一刻と変化する最新の国内外の情勢によって変わります。
円高であれば輸入がやりやすく、円安であれば輸出がやりやすいというのは当たり前ですが、どちらのビジネスも日本にとっては無くてはならないものです。その時々の為替レートだけにとらわれることなく、少し先の未来を見据えてビジネスを構築する必要があります。常に市場動向や企業の状況を把握し、リスクを見極めた上で、戦略的な輸出入計画を立てることが重要です。
(2023.4.23 – Naoko Tamura – Farul Inc.)