食品を輸入したいと思った時、どのような書類を用意すればよいのかご存知でしょうか。輸入者が食品等輸入届出書の書類を作成するだけではなく、食品の種類に応じて、様々な書類の作成・発行を輸出者に依頼しなければならないケースがあります。
実際の輸入手続きに入ってから用意しようとするとあわててしまい、間違いも起きやすくなるもの。また、貨物が出荷された後になって、輸出者が「その書類は出せない」と言ってきたら、元も子もありません。いざ日本で輸入通関する段階になって「必要書類が手元にない」とあわてないためにも、必要書類はできる限り早めに準備しておきたいものです。少なくとも商品を発注する前に、輸出者側で発行してもらわなければならない書類を出してもらえるか、相互確認しておくべきでしょう。
今回は、食品の輸入に必要な書類について簡単にご紹介します。
■食品を輸入する際に必要な書類
食品の輸入時に必要な書類は、
・輸入者が用意するもの
・輸出者(もしくは輸出国側の機関)が用意するもの
・輸入者、輸出者どちらが用意しても良いもの
があります。
具体的には、以下の通りです。
食品等輸入届出書(輸入者)※必須
原材料表(輸出者)※必須
製造工程表(輸出者)※必須
商品説明書(輸出者)※必須
衛生証明書(輸出者)※必要に応じて
試験成績書(輸出者もしくは輸入者)※必要に応じて
原産地証明書(輸出者もしくは輸入者)※必要に応じて
なお、本来は輸出者が用意すべき書類であっても、何らかの理由で入手できない時は、輸出者から情報を得て、輸入者が作成することが認められる場合もあります。
次に、各書類について、簡単に説明します。
【食品等輸入届出書】
食品等輸入届出書、いわゆる「食品届」は食品衛生法第27条「販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、その都度厚生労働大臣に届け出なければならない。」を根拠に要求される書類です。海外から食品等を輸入して営業・販売する場合はもちろん、不特定多数に無料で配布する場合も、この届出が必要です。インターネット販売についても対象となります。食品全般(生鮮食品、加工食品)、添加物、医薬品に該当しない健康食品、食品に触れる器具・容器包装、乳幼児を対象としたおもちゃについて要求される届出ですので、食品以外の雑貨を輸入する場合にも注意が必要です。
食品届の提出は、貨物到着の7日前から可能です。通関業者に食品届提出を任せることもあると思いますが、輸入する食品についての情報収集や安全性確認の責任はあくまでも輸入者自身にあります。
なお、個人的な消費目的や、社内検討用のサンプル、展示、試験研究用の目的などは、この食品届を提出することは義務付けられていません。食品届に該当しない食品を輸入する場合は、「確認願」という書類を提出します。
【原材料表】
原材料や添加物のリストです。食品に含まれる原材料は全て記載する必要があり、配合率(%)も要求されます。複合原材料(とある原料が、さらに複数の原材料からつくられている場合)についても、忘れず配合を確認しましょう。特に、販売時に商品の一括表示(日本語ラベル)を作成することを考えると、添加物やアレルゲンの事前確認は必須です。(添加物は、キャリーオーバーの場合は表示が免除される場合もあります。)
国が指定するフォーマットは特にありませんが、製造者または輸出者が作成・発行したものが望ましいとされています。日本語もしくは英語での提出が求められます。
【製造工程表】
原料がどのような工程を経て最終製品になっているのかを説明する書類です。フローチャートで原料受入~製造~出荷までの工程を細かく示すなど、わかりやすく製造工程を説明することが求められます。これも原材料表同様、フォーマットは特にありませんが製造者または輸出者が作成・発行したものが望ましいとされています。主として、生産者に用意してもらう必要がある書類となります。日本語もしくは英語での提出が求められます。
【商品説明書】
品名(商品名や品番など)、製造者名称と所在地、製造所名称と所在地が確認できる資料、商品についての説明を記述したパンフレットやリーフレットを指します。
なお、法律上は「商品説明書」という名称での定義は特になく、上記の内容を指す資料であればフォーマットに決まりはありません。
【衛生証明書】
食肉製品など一部の商品を輸入するときに添付する必要があります。輸出国の政府機関が発行する書類で、この証明書を発行してもらうためには、処理施設や製造工場があらかじめ日本政府の認可を受けている必要があります。各国にある畜産物の認定処理施設については、動物検疫所のホームページで確認することができます。
【試験成績書】
検査機関が発行した試験成績書で、主に個別規格がある食品を輸入する際に必要です。
【原産地証明書】
経済連携協定等の各特恵原産地規則に基づく原産品について、輸入国税関に対し、特恵税率の適用を要求する手続のために必要です。関税とは別に、輸入禁止や輸入制限のために必要とされる場合もあります。
こちらで上げた書類以外にも、食品の品目や生産国によって、輸入時に要求される書類があります。食品の輸入は品目ごとに細かくルールが分かれている分野ですので、新しい品目の商品を導入する場合は、事前の確認を怠らないようにしましょう。
■輸入する食品によって、必要な書類と確認事項は異なる
輸入する食品の品目によって、必要な書類は異なります。また、書類としては要求されていなくても、品質が適合していることが求められる項目がいくつも存在します。以下、一例を紹介します。
【野菜(生鮮品)】
食品等輸入届出書、原材料表、製造工程表、生産者名以外に、輸出国側で発行される検査証明書、植物検疫証明書、学名や写真など商品の詳細資料などが要求されます。残留農薬(ポジティブリスト)の基準にも注意してください。
【ナチュラルチーズ】
食品等輸入届出書、原材料表、製造工程表、生産者名以外に、輸出国側で発行される検査証明書、植物検疫証明書、学名や写真など商品の詳細資料などが要求されます。
また、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(いわゆる乳等省令)に従って、乳製品に独自に適用される食品規格基準(成分規格、製造・調理・保存基準)への適合が必要です。食品添加物や残留農薬(ポジティブリスト)の基準にも注意してください。
【畜産物(食肉やハム、ソーセージなどの食肉加工品)】
食品等輸入届出書のほか、輸入検査申請書、原材料表、製造工程表、商品説明書、輸出国側で発行される検査証明書(衛生証明書)などが要求されます。
牛豚羊家きん等の肉については、家畜伝染病の侵入を防ぐため、品目や輸出国によって輸入禁止となっている場合があります。輸入禁止国は頻繁に変わりますので、常に動物検疫所のホームページで最新の情報を確認して下さい。
■準備した書類は、食品衛生法を順守していることの証明となる
こちらに挙げた品目は、ほんの一例です。これらの書類が必要となる背景には、食品衛生法が求める食品等事業者の責任において食品の安全性が確保されていることを証明する目的があります。輸入食品に関しては、食品衛生法に適合しており、安全な食品であることを輸入者自身が確認することが求められています。
食品の品目や原産地によっては、必要な書類が異なる場合があります。輸入前に必ず、最新の情報を確認してください。
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